ZIPP SL-70 AERO エアロハンドル インプレッション「380mm幅・70mmリーチ・高剛性」スプリント最速クラスのカーボンハンドル
メインバイクのドロップハンドルをジップ SL70 エアロに交換しました。
前々からずっと変えたいなとは思っていたのですが、Di2かつ中引きのハンドル交換はかなり手間がかかるのでずっと放置…
最近かなり暖かくなってきたので、心機一転して乗ってあげたいなと思い交換したところです。では、さっそくインプレ行きましょう。
製品の特徴
公式サイトの仕様はこんな感じ
定価(税抜):41,300円(Matte Black Decal)
定価(税抜):37,780円(Matte White Decal)
重量:240g(420)
サイズ:380mm、400mm、420mm、440mm(C-C)
アウトスイープ:4°
カラー:Matte White Decal、Matte Black Decal
材質:カーボン
カーボンエアロハンドル
こんな尖ったスペックのハンドルが欲しくてインプレを見ている方なら説明不要だと思いますが、車体における前方投影面積を減らして抵抗を減らすことができます。
カーボンなので軽量化もできますね。
その分お財布の中身も減って軽量化できますが。
振動吸収性も向上が見込める…んですがこのハンドルはその限りではないので、ここは後述します。
エアロ性能
肝心のエアロ性能に関しては、他のエアロハンドルと比べてハッキリと違いが分かるレベルで良い、ということは無いです。
完成車についているようなハンドルと比べると多少は高速域で楽かな、と感じる場面はありますが、以前使っていたSACRA DBサースターとほぼ同程度、W数低減に多少の差はあるのかもしれませんが使っていて違いは感じませんでした。
このあたりはメーカーの謳い文句をどこまで信用するかですね。
ZIPP
Vuka Sprintの後を継ぐSL-70エアロバーは、Firecrestホイールの開発に使用された技術を使用しデザイン開発され、Zipp史上最も高い空力性能を誇ります。
その特徴的なバートップのウイング形状により、一般的なラウンドタイプのハンドルバーに比べ6.4ワットのエネルギーを節約することが可能。さらにリーチの長さやランプ部の角度を見直すことで、より自然で妥協のないライディングポジションを提供します。
公式サイトがなくなったので、ネット上の情報曰く高速走行時で9w削減できるんだと
(お前らそれ時速100km想定とかじゃないよな???)
形状はアナトミック寄り
ハンドル形状はオーソドックスなコンパクトハンドルとはちょっと違って、若干アナトミック寄りです。ちなみに筆者はこの感じめっちゃ好きです。
アナトミックほどポジションがはっきり分かれているわけではないですが、下ハンドルを持った時に直線となる部分がしっかりと作られていて、スプリントや下ハンをもってもがく時はかなりやりやすいです。
あとは目立ちませんが、バーエンド付近が平行に近いので、ローテーションの合間に流したり、風がきついので下ハンを持つけどそこまで踏みたくないシーンでめっちゃ快適に過ごせます。
ただ、あくまで色々ハンドルを使った上で
「ぼく、このハンドルだーいすき!」
ってなってるだけなので人によります。このあたりは好みですね。
ハンドル選択の際はここの握り心地が決め手になっていると言っても過言ではないので、いろんなハンドルを握って気に入るのを探しましょう。
実測重量
225.6gでした
エアロハンドルにしては普通に軽い
ハの字形状で使いやすい
EASTONが発祥だったか忘れましたが、ブラケット部とエンド部でC-C 2cmほどの差があります。スイープっていうのこれ?
確かに使いやすく、スプリントやもがく際はかなり力を入れやすいです。もっとも、このハンドルに交換する前(SACRA DBサースター)も同じようにC-C 2㎝ほどの差をつけていたので、この形状にしてよかった~~という感慨はあまりないですが。
とはいえ、ぶっちゃけハンドル形状はこっちのほうが良いと思うので、僕はコレ。
ただENVEは結構ハの字の角度がきつい(ブラケットC-CとバーエンドC-Cの差が40mm以上ある)のでそこは要注意です。
あとこういう上下で幅に差をつけてるハンドルはメーカーによって製品表記がエンド部のC-CなのかブラケットC-Cなのかバラバラだから、購入する前に公式HPやショップにて仕様を良く確認することを強く強くオススメします。
使ってみての感想・よかった点
硬い
これは使う前から大凡検討はついていましたが、とにかくパワーをしっかりと伝えてくれます。持った時の感触でもわかりますが、そもそも表面のカーボンが硬いんですよ。両端に力をかけてもハンドルがほとんどたわまない。。。
下ハンを持ってスプリントするときは、主に前後の動きに対応する縦剛性と、バイクの振りに対応する横剛性が必要かと思います。それについて剛性というか、力のロス率について見ると(体感ですが)
パワーの伝達効率(体感)
UNO HB-CR21(6000番台の普通のアルミハンドル)
縦:75% 横:75%
普通のアルミハンドルなので、パワーのある人だと物足りないかも
SACRA DBサースター
縦:85% 横:70%+
横剛性は若干物足りないが、ハンドル自体のしなりがあり体に優しい
うまいこと縦の動きでバイクを伸ばしてあげれば問題ない。でも急なアタックにはコンマゼロ秒でワンテンポ遅れてしまうかも。
ZIPP SL-70 AERO
縦:95% 横:95%
かたい
ほぼ込めた力をリニアに伝えてくれる。
反応で遅れることは無い。遅れたらそれは乗り手の問題。
エアロハンドルは構造上、横方向の剛性が落ちてしまいがちですが、380mmという幅もあってかこのハンドルは全くそんな感じはしなかったです。
少なくとも400~600W前後でダンシングして振り回したときは全くハンドルの底というか、剛性不足でパワーを伝えられない感覚は無いですね。
1000Wを超えるようなスプリントでも他のハンドルに引けを取ることは無いと思います。筆者にはそんなワット数は出ないのでアレですが…
硬い。でも軽い
ステム・ハンドルにおいては重量と剛性はトレードオフになりがち(カーボンステムは高剛性だがその分重い)なんですが、これだけの剛性をもちつつも実測226gと結構軽いです。
価格の低いミドルグレードのエアロハンドルだと、260gとか280gとかというケースもザラです。
「自分エアロハンドルなんで。担当は空力改善なんで。軽量化?重い?知りませんね~~」
とすら言っているように聞こえます。(言ってない)
特にアルミのエアロハンドルはもっと重いです。
これだけの剛性と軽量性を両立しているあたりは、長年培ってきたカーボン加工技術の高さによるものでしょうね。
サイコン・ライト類が付けやすい
このハンドルを買った理由の一つでもありますが、ステムクランプ部分のサイズがエアロハンドルの中ではトップクラスに広いです。
モノによりますがステム+サイコンマウントがしっかりと収まります。
これ以上に広いのはプロファイルデザインのCOBRAシリーズぐらいだと思います。あれはトライアスロンやTTバーを取り付けられるくらいの大きさがあるので。
とはいえ今は新しいエアロハンドルが続々と出てきているので、他にもあるかな?
数少ない380mm。かつ70mmリーチ
エアロハンドルで380mm幅のモノって、かなり少ないんですよ。
そこからさらにショートリーチ70mmとかになると選択肢がほぼない。
まあいっかーと思ってショートリーチのSACRA DBサースターを使っていたのですが、肩幅の関係からどうしても380mm幅を試してみたくなり。。。そこである日SACRAまで問い合わせをしてみました。
「現在ブラケット部C-C400mmのサイズを使っているのですが、同モデルの420mmと比べ、ステムクランプ部が非常に狭く、Di2用ディスプレイ用ホルダーや、サイコンマウントが取り付けられません。なんとかならないでしょうか?」
「ブラケット部C-C380mmのモデルの開発予定はないのでしょうか?」
と聞いたことがあります。翌日ぐらいに帰ってきた解答曰く
① 現状ステム部はその長さとなっております。
サイクルコンピュータとの相性は悩みどころですね。
現状はレックマウント様の台座をご使用頂くのがベストかと思います。
ただ今後、ステム部の長いハンドルをだす可能性は十分にあるかと思います。
② 380mmのご要望は多く頂くのですが、こちらも現状難しい状況となっております。
需要の問題というよりもエアロハンドルバーの設計的に380が出しづらいという状況です。
とのこと。やっぱりエアロハンドルでブラケット380mmを作るのは大変みたいですね。
多くのメーカーがラインナップしていないのも頷けます。(そもそも、使いたい人が少ない)
なので、380mmかつ70mmショートリーチのエアロハンドルは結構貴重なモデルなんですよね。
身長や手の長さが足りなくて困っているレーサーの方には結構オススメできるかと思います。
ケーブルの取り回しは結構しやすい
穴のサイズはこの手のエアロハンドルにしてはそこそこ大き目だと思います。
バリもほぼほぼないし、Di2+ブレーキケーブルという比較的楽な組み合わせではあるんだけどエアロハンドルの癖にそこそこ取り回しはしやすかったです。
ZIPPのカーボン加工技術の高さが伺えますねー。さすが高いだけのことはある。
使ってみての不満点・デメリット
硬い(3回目)
これに尽きます。メリットでもあり、最大のデメリットでもあります。
以前に使っていたDBサースターのハンドルが振動吸収性に優れていたモデルだったというのもありますが、それを抜きにしてもカーボンハンドル特有の振動吸収とか、楽になるとかはマジで無いです。
「路面の振動?手が痛い?なんすかソレ」
「自分スプリントのパワー伝達担当なんで」
「頑張ってなんとかしてくださいね~」
と言っているようにすら感じます。くやしい。
裏を返せばそれだけ剛性が高くてパワーの伝達効率が良いということなんですが、その分路面からの振動やショックの伝達効率も良いです。
なので、ハンドルに荷重をかけずに済むようなポジション、つまりハンドルやサドルではなくペダルにしっかりと荷重をかけられるポジションを模索する必要があると思います。
これだけレーシーなハンドルなので、個人的には厚めのバーテープやグローブを採用するよりも、そういった形でよりスマートに対応して上げたいなぁと思います。
キッチリと出たポジションで、無理なく荷重がかかったペダリングで走るのはやっぱり気持ちいいですよ。(もちろん、クッション性を上げるのも悪くはないけどね)
とはいえ、硬いモノは硬いし振動吸収性に関しては期待してはいけない。。。
こんな人にオススメ
・パンチャー・スプリンター気質の人
・リーチ70mmのエアロハンドルを探している人
・ブラケットC-C380mmのエアロハンドルを探している人
・マウント周りをスッキリさせたいけどエアロハンドルも使いたい人
・レース志向・速く走りたい人
・スプリント/アタックで周囲をチギるのが大好きな人
快適性を求める人には全くオススメできないですが、アタック合戦やスプリント、速く走りたいというレース志向の人にはとてもオススメできるハイエンドモデルといえます。
とはいえ、剛性が高くてリニアかつダイレクトな加速ができるということは、その分加速に使った体力も短時間で直接的に消費されているということなので、ご利用は計画的に…
と、同時に前に使っていたSACRAハンドルの良さと個性も浮き彫りになったので、こちらもまた折を見てレビューします。