ロードバイクにおけるディスクブレーキのメリット・デメリット「不要?面倒?今後は?」ショップ&選手目線から答えるよ
春らしい陽気が続き、絶好のライド日和が続きますが皆さんいかがお過ごしでしょうか?やっぱりこの時期は日没も遅いので、ロングライドには最適ですよね。次のライドに向けての新しい機材、導入しちゃおうかなぁ…
なーんて、、、このタイトルのブログを読みに来ているということは新しくロードバイクを始めようとちょっと(いや、かなり前向きに)考えている方がほとんどだと思いますが。笑
今回はロードバイクのプロショップ勤務歴あり(今は現場から離れましたが)、選手歴5年のいちユーザーの目線から、「最初の一台はリムブレーキorDISC、どっちにすればいいのか?」
という疑問について、通り一遍の謳い文句だけではなく実際に使ってみた感想や私見も交えつつ、お答えしていきたいと思います。
ということで、今回はディスクブレーキ編です。
細かい構造や通り一遍の謳い文句に関しては、既に最初の一台を検討中・カタログとか色々見ているならもうお分かりかと思うのでここでの解説は割愛して使ってみての率直な感想のみに留めます。
気になる人は一度調べてみてくださいね
DISCブレーキの良い点
自分が最初の一台を選んで乗り始めた頃、DISCブレーキはロードにはほとんど浸透していなくて、2016年にVENGE Viasがリリース、マルセル・キッテルやトム・ボーネンといった選手がプロレースの現場でちょいちょい見かけるようになっていたなーという程度でした。
それが今となってはシマノの新型コンポがディスクブレーキのみ、各メーカーもリムブレーキモデルの開発を取りやめるなど、時代の変化を感じます。
思い出話はさておき、、、さっそく違いについて見てみましょう。
ストッピングパワーが強い
お前は何を当たり前のことを言っているんだ、と言われそうですがこれは外せないでしょう。笑
ブレーキとローターの相性にもよりますか、基本的にディスクブレーキはリムブレーキと比べて小さい力で大きな制動力を出すことができます。
これがライド中にどう影響するかというと、減速のスピードが増し「早く止まる」ということができます。つまり、高速域でいられる時間が伸びるということです。
これが顕著に表れるのが下りです。下りでスピードに乗った状況を維持しつつ、以前よりも遅いタイミングでコーナリング前のブレーキングを行っても減速が間に合うわけです。
高速域でいる時間を長く保ちつつ、短いブレーキング&減速で済みます。結果としてプロレースでは下りの平均速度は上昇しているわけです。もっともこれにはエアロロードの隆盛、技術の向上という要素が強いでしょうが。
一般ライダーの目線からすると、下りの速度向上はあまり需要が無いかもしれませんが、心理的な余裕につながります。
普段のライドでの急な車の飛び出しや信号の停止に対応しやすくなりますし、周りと比べて早く減速できるので、下りや平坦のコーナリングでの限界点が少し伸びるわけです。
(厳密にいえば、リムブレーキでもディスクブレーキ並みの制動力を出せないわけではないので、少し語弊があるのですが・・・)
まあ、下りうんぬん、レースどうこうはいったん置いておくにしても、古くなって全然ブレーキの利かない年代物のママチャリと新品のものだと、当然新品の方がブレーキはよく効くし、攻めた走りや普段の足としても安心して使えるじゃないですか。
それと同じです。
「よく効くブレーキのほうが安全だし、余裕をもって走れるよね」
という認識でいいと思います。
安定感のあるコーナリング
ディスクブレーキはリムブレーキとホイールの固定方式が違っていて、スルーアクスルという器具を用いてホイールをフレームに機械的にねじ込む形(もちろん、取り外しできますよ)を取っています。
その結果どうなるかというと、ホイールとフレームの間で力が逃げ辛くなります。
ホイール、もといタイヤはロードバイクの中で唯一路面に接するパーツですが、コーナリングの際にかかる摩擦力を逃げずに体に伝えやすくなるわけです。
結果、コーナリングの際に「力が逃げずにかっちりしている」がという感触につながるように感じます。そのため、安定感が増しているように感じるわけです。
他、よく言われている点
雨の日→
リムブレーキよりもしっかり効きます
引きが軽い→
引きが軽い、というよりも油圧なので、握りこみに合わせてニュートラルにブレーキがかかるイメージですね。
車のブレーキペダルの感触に近いと思います。ぐにゅ~っと踏み込めばブレーキは良くかかる感じです。
タイヤ・チューブの選択肢が増す→
カーボンクリンチャーにはNGと言われていた、ラテックスチューブ使いたい方はどうぞ!熱問題なんて無かった
あとは超軽量インナーチューブもいけますね
洗車が楽→
ブレーキシューの削りカスが飛び散らず、ハブ周辺に集約するのでバイク自体は汚れにくいです。
ディスクローター付近は汚れますが、洗車の際にリムの外周全体をかなりきっちりクリーニングする必要はもうありません。パーツクリーナーでサッと拭けばそれだけで汚れが落ちちゃいます。これは楽。
リム設計が自由&軽量化できる→
以前はディスクブレーキ用ホイールはシマノ・マビック・フルクラム・カンパの4強が出している程度だったのが、各社こぞってディスクブレーキ用ホイールの開発・販売にいそしんでいます。
そのおかげか、今ではリムブレーキ以上に魅力的なホイールが多々できるようになりました。ホイール性能ではディスクブレーキ用に軍配が上がると思います。
少し前までは重くて使いにくそうなホイールばかりだったのが、技術の進歩は目覚ましいなと。
その分、値段の上昇も目覚ましいですが。笑
見た目がかっこよくまとまる→
ディスクブレーキの場合、アルミリム面が無くホイール一面が黒くシックな感じにまと目やすいです。
多少のリムハイトがあれば、ミドルグレードのホイールでもハイエンドのホイールでもぱっと見はそこまで変わらないので、結構かっこよくまとめることができると思います(あくまで個人の感想ですが…)
懸念点・デメリット
ということで、ここからはデメリット編です。
高い/重い/モノが無い
まずDISCブレーキですが、そもそも車体にディスクキャリパー、ローター、専用設計のフレーム等様々なものを乗せているわけですから、車体がその分重くなります。
もっと言うと、その分値段も高くなるわけです。
ざっくりとですが、同グレードのリムブレーキバイクと比べて、重量は+0.3~1.0kg、価格は2割~3割増しです。
そこまでの価格差に見合う価値があるか?という問題があるわけです。
あとは、コロナ渦の影響で世界的にロードバイクのパーツが品薄&価格高騰を迎えています。メーカーの新型、現行モデルはディスクブレーキがほとんどだと思います。完成車販売のために法人価格でゴソっと確保されているわけですが、そもそも絶対的な数が足りていません。
そうなった時に割を食うのは末端の消費者です。パーツ交換の際にそもそもモノが無かったり、品薄だったり、納期が半年後とかになったりするわけです。需要に対して供給が追い付いていない、というのが現状だと思います。
さらに言えば、スポーツバイクの本場はヨーロッパ・アメリカです(多くのフレームメーカーはここに集中している…)
極東にある人口の少ない末端の島国に、メーカーはそこまで大きなウエイトを置くのは企業戦略として合理的ではありません。
需要と供給のバランスに関して以前に比べれば状況は改善しているといっても、こと日本においては十分なレベルで供給が間に合うまでにはそれなりの時間を要するのではないでしょうか…
メンテナンスが面倒
単純にブレーキの取り付け位置が以前よりもレバーから遠ざかったこともあり、機械式DISCにしろ油圧DISCにしろメンテナンスの難易度は上がったと思います。
特に油圧DISCに関しては、一般ユーザーがセルフメンテナンスを行うには必要な工具や設備のハードルはかなり高いと思います。もっとも、これはショップにも同じことが言えます。
「いやいや、プロなんだからしっかりメンテナンスしてくれよ!」
そんなお声が来そうですが、、、もちろんメカニックの方々は日々一生懸命作業をしてくださっています。しかし、絶対的な経験数・場数が少ないんです。
一般ユーザーにとっても難しいことは、プロショップの方からしてみても難易度が上がっていることには違いありません。
もちろんお金を頂く以上は責任を持って対応するというのは大前提ですが、純粋に作業の難易度や工数が増える分、メンテナンスや維持にかかる工賃も高くなるということを買う前に把握しておいてくださいね。
その他、よく言われる点
持ち手がでかい→
油圧ディスク・機械式コンポの場合、リムブレーキと比べて持ち手はかなりゴツイです。
女性や小柄な方は、多分使いにくいと感じるでしょうね。僕も手が小さいので、あのずんぐりむっくりしたSTIレバーは正直使いたいと思いません。。。
素直に油圧ディスク用のDi2を使うか、(それでもリム版のDi2レバーよりは大きいけど)GROWTAC Equalのような機械式ディスクブレーキを活用するのがベターかと思います。
扱いが繊細→
たまたまかわからないですが、乗っていてそこまで大きなトラブルに遭遇はしてません。
輪行の際に気を遣わない?→
すみません、あんまし輪行しないのでわかりません…
ただトラブルが起こるリスクがあるのと、出先でトラブった際にかなりの確率で走行不能になるのはちょっと怖いですね。
飛行機輪行で預ける際など、バイクの扱いがどうなるかわからない状況だと特に気を遣う・行った先でのトラブル対応をある程度予見しておく必要はあるかもしれません。
エア噛みしない?→
ちゃんと取り付けてあげれば基本的には問題ありません。(というか、問題あるような製品をメーカーが出してれば速攻でクレームになるハズ…)
ただ、油圧ディスクの場合は七分組の状態から調整が必要になる場面もあります。
裏を返して言えば、Canyonや楽天で家まで直接届く形で買う場合は、到着後のトラブルがあるリスクをある程度覚悟した上で購入するのが良いかなと。
ディスクローターの音鳴り問題→
ディスクブレーキはそんなもんです。
プロレースの現場でも、スタートライン上で選手のバイクがシャンシャンなっています。世界的なワールドツアーレース、トップレベルの選手・バイク・メカニックがいる環境でも、ですよ。
ただまあ、気になることは気になりますよね。R9200シリーズ/R8100シリーズはその辺りを加味してクリアランスをかなり広げていました。
どうしても気になるのならキャリパーだけこいつらに交換するのはアリだと思います。同じタイプ(この場合は油圧ディスク)のブレーキ同士は12sだろうが11sだろうが互換性があるので。
モノは良いが値段は高い
ディスクブレーキのメリット・デメリットに関してはざっとこんな所でしょうか。
個人的に、ディスクブレーキに関しては現状需要と供給のバランスが成り立っていない、供給が追い付いていないという印象がかなり強いです。
ロードバイク全体がそうかもしれませんが、特にDISCモデルはここ1~2年の値上がり幅が10%を超えるなど、ちょっとやりすぎ感があります。
確かに物自体はいいですし、将来性を加味すれば最初の一台目にディスクブレーキを選ぶのは全然アリだと思います。
…ただ、正直なところ一台目のバイクとして選ぶには価格が高すぎると思います。
いきなり20万30万のバイクを買うことのできるのはお金のある社会人だけです。
安いディスクロードで良くない?
「なら、中華マイナーブランドの安いディスクブレーキ搭載のバイクを買えばええやん!」
と考えているアナタ。ちょっと待ってください。
ディスクブレーキのメンテナンスについて、ショップも経験値が少ないという話をしましたよね。あれはフレームメーカーにも同じことが当てはまります。
大手メーカーはディスクブレーキの黎明期からプロチームにバイクを供給・現場の選手からのフィードバックを通じて「バイクの性能を最大限引き出せるように」開発を行ってきました。
ところが価格勝負のメーカーだと、開発にかけられる予算も限られます。
ひどいところだと、リムブレーキのフレームにディスクブレーキ台座をポン付けしたような設計のフレームもあるわけです。これでは安全性も何もへったくれもありません。
何が言いたいのかと言うと、せっかくディスクブレーキを買うのであれば、
多少高くてもTREK、SPECIALISED、GIANT、Cannnondale、MERIDA、CANYONといった超大手メーカーから買ったほうが最終的に幸せになれますよ、ということです。
価格第一ではなく、性能>価格 という軸で見れる人向けということです。
こんな人にオススメ
・経済的な余裕がある人
・一台目の予算を25万円以上確保できる人
・ディスクブレーキを使ってみたい人
・ミドルグレード~ハイエンドのバイクが欲しいと思っている人
・何よりも安全性重視でロードバイクに乗りたい人
・メンテナンスは時間がないので、ショップにお任せ!と言う人
・新しい機材をどんどん使ってみたい人
何度も言いますが、DISCブレーキ自体はとてもいいモノです。
ただ値段が高いです。
ディスクブレーキの恩恵をそれなりに受けようと思えば、ディスクブレーキの性能を最大限に生かした上で設計されたフレームのほうが良いのですが、エントリーグレードの安いバイクだと、予算的になかなか難しいものがあります。
一台目のバイクにしっかりと予算がかけられるのであれば言うことは無いですが、価格を安くしてしかもディスクブレーキを導入…
となると、性能と金額のバランスが結構な割合でケンカします。
メンテナンス費用もそれなりにかかると思ってもらって違いありません。
…と、ここまで読んでいただければわかると思いますが、個人的には最初の一台にディスクブレーキ付きのミドルグレードバイクはお勧めしない、とまでは言いませんが、「ちょっと待って!」と感じる場面が多いです。
ということで、リムブレーキ編に続きます